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フィルム写真と旅する

地方に暮らす写真好きの日常

夏の川、日本の原風景

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夏の川をフィルムカメラで撮る。海水浴にキャンプ、BBQに花火など、夏は外に出て遊ぶ機会が多くなる季節。海、山、川。夏のレジャーはどこへ行くのが一番オススメかと聞かれると「川」かなあ。「山の中の川」だと涼しいのでオススメです。

川へ向かう

蒸し暑い8月のある日、被写体さんとの会話の中で、
被「今年まだ海も川も行ってないんですよ」「行こうって言い出す人がいなくて」
僕「じゃあ川に行って写真撮ろう」「涼しいし魚も釣れる」
僕「川魚は釣ってすぐ焼いて、塩と醤油で食べると最高に美味いのだ」
被「わーい!いきましょう!」「魚は別にいい」
という事で川へ行くことになった。

山の中にある小さな川を目指す。車で向かう道中は山の緑で覆われている。
自然の分厚さを感じる山の中には集落や民家が点在していて、人の暮らしている空気を感じながら車を走らせる。
街の中とは違う、自然の風景に人の暮らしがとけ込んでいる風景。山の中に住むのは良さもあるだろうし、大変さもあるだろう。

夏の原風景

ふと、昔ながらの木造の家の縁側で、青い空と山の自然を眺めて過ごしたいなと思う。縁側では風鈴がチリンと鳴って、スイカと麦茶と蚊取り線香とうちわが置かれてある。
今日も明日も明後日も特にすることはなくて、聞こえてくるのは蝉の声と川の流れる音。人がやって来て、皆どこかへ帰っていく。
時間や人は流れても、日常の中でそれを意識することはなくて、ただ自然がいつも傍にある。
日本の夏の原風景のようだ。今では珍しい風景になったのかもしれない。

川に着くと親子連れが何組か来ていて、川遊びをしていた。
山に囲まれた川はやはり涼しい。川の水は透明でさらさらと流れて、足をつけるとひんやり冷たくて気持ちいい。
被写体さんには自由に動いてもらう。白のワンピースに川の光が微かに反射して、ファインダー越しに青白く映る。風は静かに緑の葉を揺らしている。

風の音と微かな声

話をしながら撮るのもいいし、静かな表情を撮るのもいい。条件が揃っているとどんな瞬間もいいものだ。表情も動きも作らず、感じるままに撮る。

一瞬、風の音が消えて、時間が止まったような感覚になる。
どこからか声が聞こえてる。囁くような女性の声だ。山の木々を通り抜けて、微かに耳元に届いてくる。
まるで自然の中にある音の一部のように。

ファインダーから顔を外し、カメラを構えるのを止めて後ろを振り向く。
そこにはさっきまでと変わらない、子供達の遊ぶ姿があった。

被写体さんに尋ねる「今なにか言った?」
被「ううん、なんにも」

確かに聞こえた声の余韻は、やがて川の流れる音に消えていった。