フィルム写真と旅する

地方に暮らす写真好きの旅と日常

早朝の海を撮る。夜の終わりから朝に変わる時間。

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早朝の海へ写真を撮りに行く。まだ眠い目を擦りながら、どうしてこんな朝早くからなんてムニャムニャ呟きながら。

いや言葉なんて出ない。頭も体もまだ眠っているから。防寒をしっかりして、カメラだけはしっかり持っていく。

行かなければならない朝

行かなければいけない朝がある。

なかなか晴れない日が続いて、今日こそは光の写真を撮りたい時。早朝のまだ何にも染まっていない、透明な空気を撮りたい時。僕達は行かなければならない。

まだ太陽の姿は見えない。水平線が少しずつ夜の闇から深い青へと変わる頃、車は海へ着く。

冬なんかは誰も起きていない。夏だってこんな時間に誰もいないだろう…なんて油断していると、人は居る。駐車場に車が何台もある。そう、先客は沢山いた。

早朝の先客達

海には既にサーファーがいる。砂浜にもサーファーがいる。黒いボディスーツを身にまとって、皆決まった方向を向いている。もうすぐ朝の太陽の昇ってくる、海の方向だ。

何かを覚悟したように穏やかな、しかし厳しさを含んだ目つきで波を見つめている。その表情を見た者は同じ感想を口にする。戦士の顔をしている、と。

サーファーと海の時間を共にする者。それは釣り人である。そういえば近所の釣具屋の閉まっている所を見たことがない。朝を釣り、昼を釣り、夜を釣って、また朝を釣るのだ。

彼らの一日は長い。月単位、年単位でものごとを見ている。目先のあれこれに気をとられる内はまだまだ素人なのだろう。海を見つめる彼らの表情も、穏やかな中に鋭さを含んでいる。

サーファー、釣り人、そして早朝の海の写真を撮りに来たカメラマン。カメラマンはコンビニで買ったおにぎりを食べている。

体が冷えるとカメラの操作に支障が出るので、朝の海辺ではいつも体を小刻みに揺らせている。さむい、さむいとよく口にする。あと疲れきった目をしている。眠いからだ。

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夜の終わる時間

さっきまで夜だった空は朝の色に変わろうとしている。海の向こうの水平線に光が見え始める。

海辺では波の寄せる音と引く音が繰り返される。海水が砂浜を削る音が耳の奥に響く。一定のリズムで繰り返されるその音は、静かな音楽のよう。

目を閉じると深い海の底にいる。海底にいる魚は、もうすぐ太陽が昇って朝がやってくることを知っているのだろうか。それとも何も気にしないまま眠っているのだろうか。

意識を自分に戻すと、体はゆっくりと起きてきたけど心はまだ眠ったまま。魚と同じかもしれない。目の前の海はサーファーでいっぱいになる。

昨日から今日へ

水平線を基準に空は少しずつ明るくなっていく。夜が終わっていくみたいだ。

数時間前まで僕たちは夜の中にいた。仕事をして、家に帰って、ご飯を食べてお風呂に入って夜食を食べて、深夜番組を見ていた。さっきまでその時間は昨日だった。

空が明るくなって、生まれたばかりの光が海に差して、昨日は過去になっていく。

また新しい一日が始まってしまう。何だか寂しいことのように感じるのは、夜の時間が好きだからかもしれない。

ファインダーを覗いて、海の向こうの空にピントを合わせて、ボタンを押す。
朝の海辺で、波と風の音に混じってシャッターの音が一瞬響く。

それは静かな声のような、呼吸のような音だった。