フィルム写真と旅する

地方に暮らす写真好きの日常

早朝の海を撮る。夜の終わりから朝に変わる時間。

f:id:andtr:20170116213140j:plain

早朝の海へ写真を撮りに行きました。まだ眠ったままの街を抜けて、少しずつ明るくなる東の空へ近づきます。静かな海辺には、夜の終わりと新しい一日の始まりが待っていました。

早朝の海へ行きたくなる

曇りや雨の日が続いて、そろそろいい光の写真を撮りたい!という時があります。しかし明日も仕事なので、晴れたとしても写真を撮りに出かける事は出来ない…どうしよう。

新鮮な光の写真を撮るために、太陽の昇る前、早朝の海へ。まだ何にも染まっていない、透明な光を写真に収められたら、今ある欲求も収まる気がするのです。

水平線が夜の闇から深い青へと変わる頃、車は海へ着きます。まだ太陽の姿は見えません。

街はまだ眠ったまま。起きているのは早朝から配達をしている人達くらい。こんな時間には誰もいないだろう…なんて思っていると駐車場に車が何台も止まっています。早朝の海辺に人が居る。そう、先客は沢山いたのでした。

海辺の先客達

海には既にサーファーが入っていて、砂浜にもサーファーがいます。黒いボディスーツを身にまとい、皆決まって同じ方向を向いています。もうすぐ朝の太陽の昇ってくる、水平線の方向でした。

何かを覚悟したように穏やかな、しかし厳しさを含んだ目つきで波を見つめています。

早朝の海辺には、他にもサーファーと行動時間を共にする者がいます。それは釣り人です。そういえば近所の釣具屋の閉まっている所を見たことがありません。朝は釣り、昼も釣り、夜釣。そしてまた朝の海で魚を釣るのです。

海を見つめる釣り人達の表情を見ると、穏やかな中に鋭さを含んでいます。先ほどのサーファーと同じ種類のものを感じます。皆表情は穏やかだけど、目の奥、心の内側に熱い想いを秘めているのです。

サーファー、釣り人、そして早朝の海の写真を撮りに来たカメラマン。カメラマンはコンビニで買ったおにぎりを食べています。指が冷えるとカメラのダイアル操作に支障が出るので、指先をあたためつつ、体を小刻みに揺らせています。

f:id:andtr:20170116213206j:plain

静かな波の音、広がる風景

夜の空から朝の色が見え始めて、海の向こうの水平線に光が昇ります。海辺では波の打ち寄せる音が繰り返されます。一定のリズムで繰り返されるその音は、静かな音楽のように耳に届きます。

目を閉じて呼吸をすると、深い海の底にいるイメージが見えてきます。いま海底にいる魚は、もうすぐ太陽が昇って朝が来ることを知っているのだろうか。それとも何も気にしないまま眠っているのだろうか。

ゆっくりと目を開けると、明るくなる空に合わせて目が覚めて、意識もはっきりとしてきます。スケールの大きな風景を前に、悩みや胸のつっかえは小さなものに思えて、朝が来るのと一緒に洗い流されていきます。いつの間にか海はサーファーと釣り人でいっぱいになっていました。

一日の始まりの、最初の光

水平線を基準に空は明るくなっていきます。夜が終わっていくみたいです。

数時間前まで僕たちは夜の中にいました。仕事をして、家に帰って、ご飯を食べてお風呂に入って、飲みものを片手に深夜番組を見ていました。数時間前までは昨日を過ごしていたのです。

空が明るくなって、生まれたばかりの光が海に差して、昨日は過去になって、また新しい一日が始まります。

僕はファインダーを覗いて、海の向こうの空に焦点を合わせて、シャッターを切りました。早朝の海辺で、波と風の音に混じって、パシャッという音が響きます。

それは静かな声のような、目覚めて初めての呼吸のような音でした。