フィルム写真と旅する

地方に暮らす写真好きの日常

早朝の高速道路、山間の県境、深い霧

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早朝の高速道路。山間の県境を走る車の周りを、深い霧が覆っていました。

1月の終わりの朝。まだ暗いうちから外に出て、150kmほど離れた街へ写真を撮りに行った日のことです。

まだ朝の早い時間だから、高速を走る車はまばらで、深い霧に囲まれた道では前を行くトラックのテールランプを追いかけるのがやっとの状態でした。

この山を越えれば次の街に近づく。前を行くトラックとは同じ距離を保ったまま。周りには冬の山々。窓から差し込んでくる朝の光。

霧の中を走っているその間、現実感が無かったというか…不思議な感覚でした。

あの時、何を感じて、何を考えながら走っていたのだろう。

早く目的の街へ着きたい気持ちがすうっと消えて、後に戻りたいとも感じなくて、ただ霧の中をふわふわと浮かんでいるような感覚。

車のタイヤは確かに地面を踏んで走っていて、前に進んでいる筈なのに宙に浮かんでいるような感覚。

あの日は確か、朝の3時か4時に目を覚まして、前々から決まっていたようにカメラを持って、行かなければならないように車に乗ったのです。寒さ対策に毛布を積んで。

サービスエリアで仮眠をとって、外が夜から朝に変わってきた頃に目を覚まして、あたたかいレモネードを飲んで体を伸ばして運転を再開させて。

山間の道には県境があって、ちょうどその境目の辺りを朝の霧が覆っていました。

深い霧の中を抜けると、そこはあっちの世界…ではなく、霧の途中であっちの世界へ行って、また戻って来たような…。

霧の中を走っている時は、いつまでも風景が変わらなくて、同じ様な山々が連なって、前を行くトラックのテールランプも同じ距離で、ずっと同じ場所から進んでいないのでは、という気持ちでした。

写真には残せなかったけれど、あの時間、目で見て肌で感じ取ったものはぼんやりと覚えていました。何日か経ってやっと言葉に出来るようになった。

いやあ、不思議な感覚だったなあ。

少しの間、どこかへ行って、また戻って来たのかなあ。