フィルム写真と旅する

地方に暮らす写真好きの旅と日常

5月の緑いっぱいの山に行って、帰りたく無くなった話

f:id:andtr:20170519010108j:plain

GWも終わり、夏がやってくる前に梅雨の季節だなあ…とぼんやり考えていた5月のとある休日。その日は朝から、今年もあと1,2ヶ月でやって来るであろう夏を予感させる日差しが照っていました。

焼けるような太陽。部屋の中では半袖のTシャツで充分だったし、外に出ても同じだったかもしれません。

その日は今年初めての麦茶を淹れました。GW明けの余韻も束の間、5月病に浸らせる隙を与えず、梅雨を通り越してもう夏がやってきた。

扇風機を出さないと。そう思ったのです。

夏のような日差し、そうだ山へ行こう

昼からは被写体さんと撮影の予定だけど、こんなに暑いとなあ。どこへ行こう。と考えて、そうだ山へ行こうと決めました。

街の中よりは涼しいだろうという期待を込めて。コンビニで水分を買って。虫除けスプレーも忘れません。

幸い、被写体さんは日傘を持参してきてくれました。ナイス。

まだ5月なんだよなあ…。フロントガラス越しに照りつける太陽を睨みながら、それでも上々な気分で、冷房を効かせた車を走らせたのです。

5月の山の涼しさと、自然の音たち

予想通り、山の中はとても涼しいのでした。新緑の木々が多く生えた場所を選んだので、昼過ぎからは陽が傾いていい具合の木陰を作ってくれていました。

緑の葉っぱ越しに太陽の光が差し込んで、写真にもなかなか悪くない情景です。

そうして写真を撮りながらしばらく辺りを散歩します。緑の中を歩いていると、時折木と木の間を通り抜ける風の音や、野鳥の囀りが聴こえてきます。

風の音と鳥の囀りと、歩いた時の土や草、小さな枝などを踏んだザッ…パキ…パキ…という音、それにシャッターの音が混じって、自然の中で撮影してる感が出てきました。

音が鳴り止んだ時の静寂も心地良くて、山に来るまでは何だよ…と思っていた強い日差しも、緑に囲まれていると案外いいやつに感じられるのでした。

帰りたく無くなってくる

「帰りたく無くなってきたでしょう。」

頭の中で誰かの声がしました。

「帰りたく無くなってきたんじゃないの。」

周りには僕と被写体さんしかいないのに、頭の中で他の誰かの声がします。誰だろう、この声の正体は。

もしかして、山の精。

シャッターを切る手元を緩めた僕を、被写体さんは不思議そうな表情で見ています。

「いやあ、何でもないよ。」

でも帰りたく無くなっていたのは事実です。だって心地いいし、何より涼しい。

山の中では、いつもの街中とは別の時間が流れていました。

f:id:andtr:20170519005803j:plain

落ち着ける場所があるといい

仕事に疲れた時、人付き合いに疲れた時、何かに行き詰まった時、暑さから逃げたい時、日常を忘れてゆっくりと過ごしたい時、自然の音と光の差す、緑いっぱいの落ち着ける場所があるといい。

ひとりでも、誰かと一緒でも。お弁当など持ってきて食べるといい。本を読むでも、写真を撮るでも、何もしないでもいい。何だかほっとする時間がある。

全ての人にとって同じじゃないかもしれない。でも何かを求めている人に、そうだといい。

山の中で過ごす休日

ここの空気を吸って、山の上から流れる水を飲んで生きていけば、数日で別の人間に生まれ変われるんじゃないか、そんな気持ちにさせてくれる時間と場所でした。

でもきっと、長い間居ついてしまうと、この静けさも光も、空気の新鮮さも失われてしまうのです。いいなと感じていたものも、いつの間にか当たり前に変わってしまうのです。

それならやっぱり時々やって来て、いいものがここにあることを確かめて、また帰っていく位が良いのです。

「また来るね。」

日が陰って、随分長い間山の中にいた事を知りました。シャッターを切る回数が思うより少なかったのは、いい時間を過ごした証なのでした。