フィルム写真と旅する

地方に暮らす写真好きの旅と日常

夏の夕暮れに切なくなる理由

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夏の夕暮れは少し切ない。春夏秋冬、一年を通して夕暮れの時間は必ずやってくるのに、夏の夕暮れの切なさは特別なものです。何故だろう。

夕暮れと切なさの記憶

朝から始まった一日は、暑い夏の正午を抜けて、夕暮れと共に一度終わる。

学校に行くのはつまらなくて、教室に着いても愛想笑いを浮かべて、友人達の笑い声や、先生の話す声は全て子守唄のよう。

窓際の席でいつもの時間に眠くなるけど、楽しくもないし楽しくなくもない学校に私が毎日来ている理由。それは同じクラスの遠くの席のあの人のこと。

程よい長さの黒い髪と白いシャツが眩しくて、サラサラのあの髪に触れたくて、襟元から覗く細い首筋をいつまでも眺めていたくて、窓から入る風が教室のカーテンを揺らして、それでも私はあの人を目の中から離さなかった。

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いつも眺めていたあの人に、夏休みを前に伝えたい気持ちがあって、夏休みが終わった後だと意味がなくて、どうしても気持ちを伝えたかった。今日は言えると思って、でも呼び止められなかった放課後の廊下の真ん中。

カーテンのない廊下の窓から、オレンジ色の光が真っ直ぐに差して、今日もあの人の背中が校舎の向こうへ消えていく。遠い、遠いよ。私の気持ちはあの人のすぐ隣にあるのに、隣にあるつもりなのは気持ちだけだよ。ねえ遠すぎる。

学校の帰り道、夕暮れの空を眺めながら歩く。別れ際にあの人がちらりと見せた笑顔を反芻して。伝える決心をした今日の朝には戻れないけど、夕暮れが終われば夜が来て、また明日がやってくる。

だからさよなら今日の私。今日の私の気持ちもさよなら。心の中でそう呟いて、夏の夕暮れの空に投げた。

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夏の日に見ていた風景

楽しかった記憶も、つらかった記憶も、その時に見ていた風景と一緒に覚えています。

一日の終わりに沈んでいく夕日と、空の向こうに消えていく雲と一緒に、伝えられなかった想いを夕暮れの空に浮かべて、ふうっと消してしまえたらいい。

夜にやってくる後悔も悔しさも、自分を責める気持ちも相手を思って寂しくなる気持ちも知ってるから、夕暮れの時間の今は立ち止まって、一瞬でいいからほっとした気持ちでいたい。一日の終わりに少しだけ気持ちが軽くなったような気がして、でも暗くなると切なさはやってくる。

期末テストの終わり、一学期の終わり。部活の練習のひと区切り。制服のシャツから離れない汗。どこにでも行けたけど、どこにも行けなかった放課後。誰もいない教室、渡り廊下、図書室の窓から見た夕焼け。もうすぐやってくる夏祭り、花火大会。その後に続く長い長いお休み。

僕たちの記憶の中には、どこか共通した想いや風景が流れているのかもしれません。

どこにでもある、だけど特別な夏の日の夕暮れ。

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