安藤写真事務所

地方に暮らす写真好きの日常

夢の形

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星が幾つも輝く夜。ひとつひとつの星の向こうには、見たことのない生き物がいる。僕たち人間に似た生物が暮らしを営んでいて、向こうからこちらを眺めているかもしれない。

山に囲まれた街がある。街の中から山の向こう側は見えない。見えないから何があるかを想像する。秘密基地があるかもしれない。宇宙船の発射台があるかもしれない。

行ったことのない平原の中心には、ぽつりと朽ちた廃墟がある。時間をかけて雨を受け、風を受けて壊れていったその建物に、昔は人が住んでいたのかもしれない。

まだ知らない場所には、人の集まるお店のような空間があった。一人減り、また一人減っていたその場所は、何年経ってもそこに集まった人の匂いを覚えているのかもしれない。

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目に見えている現実から、今ここには無い夢の風景を想像する。人のいる風景。誰もいない風景。誰もいなくなった場所にポツンと立つ自分自身のイメージ。

いつまでも夢みたいなことをと人は言う。変わってるねと人は言う。本当にそうだろうか。誰かの目には見えていないものが、僕の目には確かに見えている。心の中に浮かび上がっている。

映写機が古い映画を投影している。フィルムがカラカラと音を立てて回っている。きっと夢の風景を写したフィルムだ。

人の見た夢の形を信じている。今の僕が、次の瞬間にイメージするものを信じている。霧や幻といった形のないものから、誰もが感じられる形あるものが生まれることを信じている。ずっと信じて行動している。

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心が見ている世界を共有したい。写真をやっているのはそういう理由かもしれない。写真じゃなくてもいいのかもしれない。隣にいる人に、大切な人達に、多くの人達に伝えたい。

人のいない場所に、人のいた気配があること。何もない場所に、昔は人の賑わう街があったこと。緑に包まれた森の中に、人の残した文化があったこと。

今を生きる人が、それらを感じ取れるように。

全部知っていたから、何かひとつを残したかった。夢の形。

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