安藤写真事務所

地方に暮らす写真好きの日常

蜃気楼は遠く

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いつかこの先ではなく、今を軽やかに飛ぶために。
一日先、一年先ではなく、今の一分一秒を焼き付けるように。そういう風に、私は生きたい。

こうしたい、こういうものを目にしたい。こういうものが欲しいという願いを叶えるのは、いつも夢に見たイメージでした。
現実とは離れた場所にある、遠い彼方の蜃気楼でした。

今欲しいものはここに無い。暮らしている場所には何も無いと思っていて、実際に手にしたいものも目にしたいものも、その時、その場所には何も見つけられなかったのです。

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地面を掘り起こしても、宙を泳いでも手応えの無かった場所から。今日まで生きてきた時間を掛けて、やっとひとつの答えを掴んだ気がします。

それは、人が生まれた後から消えるまでに見る、夢のようなものでした。

一瞬の間の幻のような、蜃気楼のような、子供の頃から心の中にあった、光の揺らぐイメージに似ているのでした。

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何も無いと思っていた場所に、求めていたものはありました。

田舎に生まれて、地元を出て、人の集まる場所へ行って、それから様々な土地へ旅をして、人に会って、感性に触れて、時間の流れを感じ取って。

巡り巡って、また生まれ育った場所に帰って来た時、自分の人生に於いて、一番の落ち着くポイントを見つけたような、心がほっとする場所を再発見したような、そんな気持ちを覚える瞬間がありました。

何も無いことから目を背けることは出来なくて。暮らしていた時間と、ほんの僅かでも生きた証がそこにあって。ひとつも変わらない街並みも、少しずつ変わっていく人の生き方も、流れていく自然も、何も言わずに置かれていた。

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懐かしい場所の匂いと、いつも夢に見ていた蜃気楼。
部屋の中を真っ白にして、心の中を真空にして、求めていた空へ飛んで行きます。

今、そこにいるのです。心から欲しかった場所に居るのです。

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